ヒース(ヘザー)の花が見頃かと思い、イルクリームーアIlkely Moorに。
ムーアは荒れ地、原野、湿原地を表す言葉で、イルクリームーアにはどれも当てはまります。
ここからあと200mほど急な坂道を上ると平坦な場所に出るので
そこを目指して歩き続けます。
途中に流れる小川。いつもここで一休みする人や水に戯れる子供たちを見かけます。
到着。ここは海抜400mくらいなので遠望を楽しめます。
イルクリーの街や遠くのワーフェデイルWharfedaleの景色を望む人たち。
さてイルクリームーアはヘザーのほかに
ヨークシャーの民謡に歌われた場所として知られています。
有名なこの民謡「On Ilkla Moor Baht ‘at」を
普通の英語に直すと「On Ilkley Moor without a hat」で
「帽子なしでイルクリームーア」という意味。
ヨークシャー方言の歌詞は次の通りなのですが、とても英語とは思えません。
Wheear ‘ast tha bin sin’ ah saw thee, ah saw thee?
On Ilkla Mooar baht ‘at
Wheear ‘ast tha bin sin’ ah saw thee, ah saw thee?
Wheear ‘ast tha bin sin’ ah saw thee?
On Ilkla Mooar baht ‘at
Tha’s been a cooartin’ Mary Jane
Tha’s bahn’ to catch thy deeath o’ cowd
Then us’ll ha’ to bury thee
Then t’worms’ll come an’ eyt thee up
Then t’ducks’ll come an’ eyt up t’worms
Then us’ll go an’ eyt up t’ducks
Then us’ll all ha’ etten thee
That’s wheear we get us ooan back
普通の英語にすると
Where have you been since I saw you, I saw you?
On Ilkley Moor without a hat
Where have you been since I saw you, I saw you?
Where have you been since I saw you?
On Ilkley Moor without a hat
You’ve been courting Mary Jane
You’re going to catch your death of cold
Then we will have to bury you
Then the worms will come and eat you up
Then the ducks will come and eat up the worms
Then we will go and eat up the ducks
Then we will all have eaten you
That’s where we get our own back
となり、ざっくりと訳すと
最後に会った時からどこに行ってたんだい?
帽子なしでイルクリームーアに行ったのかい?
メアリー・ジェーンを口説いていたのかい?
(帽子なしで冷たい風が吹くイルクリームーアに行くと死ぬほど)
ひどい風邪をひくぞ。
そしたら墓に埋めなくちゃな。
そしたら虫が体を食べにくる。
そしたら鴨が虫を食べにくる。
そして僕らは鴨を食べる。
そしたら僕らは君を食べたことになる。
君に仕返しをしたというわけさ。
と、まあ何ともシュールな歌詞。
民謡や童謡はどこの国もこんな感じが多いですね。
ここで歌われている帽子は耳当てがついているタイプを指しているのでしょうね。
この民謡はかつて軍隊の行進曲に使われ
今でもブラスバンドが演奏する曲として人気があります。
ヨークシャー観光局が地元出身のタレントを起用して
ヨークシャーのアンセムとされるこの民謡のミュージックビデオを作っています。
でも少しやり過ぎという感じは否めません。原曲が分かりづらくなっています。
どなたかは知りませんがこの方のバージョンが
ヨークシャーアクセントも含めて正統派です。
先ほどの地点で引き返す人が多いですが、南方向に向かってさらに歩きます。
数年前のこの辺りは湿地で歩くのが困難な個所もありましたが
今は石が敷いてあって快適に歩けます。
ここではないのですが、ボランティア活動で同じ型の石を敷く作業をしたことがあります。
ヘリコプターで上まで運搬して積み上げられた石を目的の場所まで運ぶのですが
石が重すぎてとても一人では運べませんでした。
今回のウォーキングの折り返し地点に到着しましたが、先客がいました。
このストーンサークルはTwelve Apostle(十二使徒)と呼ばれ、先史時代の遺跡です。
元々は大きな石が並べられていたそうですが、今あるのはその名残です。
これはCow & Calfと呼ばれる岩群で
近くにこの岩にちなんで名付けられたパブ&インがあります。
1987年12月1日、ここイルクリームーアで未確認生物(エイリアン)が
目撃されたとの報道がありました。真偽のほどは分かりませんが
冬になるとひとけのない暗い荒涼としたムーアに冷たい強風が吹き
濃い霧もよく発生するので、いかにもという感じがします。
そんな真冬に歩いてみるのもいいかもしれません。
もちろん帽子をかぶって。
August 2015